「家族が認知症を発症した。どうすればいいの・・・。」
成年後見制度は精神上の障害(知的障害、精神障害、認知症など)により判断能力が十分でない方が社会生活を営んでいく中で不利益を被らないように家庭裁判所に申立てをして、その方を援助してくれる人を選任してもらう制度です。
認知症を発症された高齢者ご本人(以下「ご本人」といいます。)のために施設への入所を考えたい、ご本人名義の不動産を売却したい、定期預金を解約したいなどの場合も成年後見人を選任する必要があるでしょう。(当然のことですが、これらのことを親族の利益のためにやってはいけません!あくまでもご本人のために必要な場合に限ります!)
成年後見制度は精神上の障害により判断能力が十分でない方の保護を図りつつ、ご本人の意思を尊重し、残存能力を活用し、家庭や地域で通常の生活ができるような社会を作るということを理念としています。ですので、成年後見人が選任されてもスーパーでの日常のお買い物など日常生活に必要なことはご本人がすることができます。
親族の方々が成年後見に就任すると・・・
成年後見人には、お子様・ご兄弟などのご親族が就任することもできます。
ただし、ご本人とご自身の財産は明確に区別して保管しなければならず、また、毎年家庭裁判所へ業務報告をする義務もあります。ご本人の財産を成年後見人が自分の利益のために使い込んでしまうと、場合によっては横領などの罪に問われる可能性もあります。
成年後見人への就任を専門職に依頼すると費用がかかりますので節約したいとお考えになることもあると思いますが、ご親族が就任なさる場合は細々とした義務・業務も避けられないことは心得ておくべきでしょう。
なお、親族の方を後見人候補者として申し立てをしても、ご本人の財産の額・業務の内容(就任後に不動産売却がある、遺産分割協議等の相続手続きがある、など)によっては司法書士等専門職が選任されることもありますのでご注意ください。
司法書士が成年後見人に就任すると・・・
司法書士が成年後見人に就任した場合も親族の方が就任した場合と同様の義務が課せられます。それらに加え、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート(以下「リーガルサポート」といいます。)への報告も義務づけられています。
その結果、司法書士後見人は、家庭裁判所とリーガルサポートによるダブルチェックを受けることになります。
また、財産の着服を未然に防ぐために、リーガルサポートによる預貯金通帳の原本確認が実施されるので、司法書士が成年後見人に就任した場合は、その他の専門職が成年後見人に就任する場合に比べて、より適正かつ厳格な後見業務を行うことになります。
費用について
司法書士等の専門職が成年後見人に就任すると、成年後見人に対して報酬を支払わなければなりません。金額はご本人の財産額や業務内容によって変わりますが、月あたり2~6万円ほどとなっているケースが多いようです。費用はご本人の財産から払われるので、親族が負担する必要はありません。
なお、上記報酬額を成年後見人自身(司法書士等)が勝手に決めることはできません。報酬額は必ず家庭裁判所が決定しますのでご安心ください。
(本人に代わって遺産分割協議を行ったり不動産を売却したりなど、成年後見人の仕事が複雑だった場合には、上記の報酬額とは別に報酬が付加されます。この場合も家庭裁判所がその額を決定します。)
その他、最初に家庭裁判所へ提出する成年後見人選任申立書の作成を司法書士へご依頼いただく場合は、おおむね10万円前後の報酬(消費税別・実費別)がかかるのが一般的です。この申立書作成費用につきましては各事務所の報酬基準によって異なります。